2008年9月15日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★相撲協会を墜落させる「野放し」と「勝手放題」
   
  角界の不祥事連発は目を覆うばかりである。露鵬のカメラマン暴行(06年7月)、旭天鵬の交通事故(07年5月)、 巡業を休みながらモンゴルでサッカーに興じていた朝青龍(07年8月)…。
 そしてとうとう力士暴行死事件。時津風部屋で起きたこの事件(07年10月)は生々しく、その後も暴力事件は続いている。特に「元2代目横綱・若乃花」 の栄光の看板を背負った間垣親方が竹刀で弟子に暴行。この事件で、間垣部屋の目を覆うばかりの野放しぶりと弟子たちの勝手放題ぶりが露呈されてしまった。 そこに、留めを刺したのが若ノ鵬の大麻吸引である。

 今度の事件をAPが世界に打電した。「ロシアのスモウスター逮捕」。「才能があるのに、激しい気性が災いしている」と、昨夏の朝青龍事件にも触れ、 「品格に欠ける力士に厳しい目をむけている」と伝えている。ちなみに、「厳しい目」を向けているのはファンであり、相撲協会の目は“ふしあな”同然、 うつろである。
 誰もが「危ないなあ…」と思っている矢先だった。若ノ鵬の素行の悪さは以前から問題になっていた。支度部屋で大音響で音楽を聴くといった傍若無人ぶりや 負けた腹いせに風呂場で棚を壊してしまう暴れ方をしたり「勝手放題」だった。
 それなのに、部屋は彼を「野放し」にしていた。間垣親方は何を教育していたのか。これが一番悪い。この若者がマンション暮らしをしているのを親方は 知らなかったというからびっくりである。強い力士を持つことばかりにこだわって大事な教育を怠り、目をつぶってきた。朝青龍と師匠の高砂親方(元大関朝潮) の関係がまさにそれであることを、モンゴル事件で私たちはたっぷりとみせられてきた。そして今や朝青龍はモンゴル場所を満面に笑みを浮かべながら “仕切った”。協会はなす術(すべ)もない風である。

 警察庁の調べによると、今年の上半期の大麻事犯による検挙者は168人で過去最高水準であった。押収量も乾燥大麻947キロと前年同期より大幅に ふえている。密輸も急増している。若ノ鵬が逮捕された前日(8月17日)も群馬県で会社員ら男女8人が野外パーティーで大麻を吸って逮捕された。
 大麻はヨーロッパでは規制がゆるいが、日本では違法であり、人の精神に影響を与える危険な薬であるのは間違いない。軽い気持ちで使い、挙句の果ては依存症 になり「妄想―異常行動―廃人」の転落が待っている。
 大麻を入り口にハードドラッグへ進んで行く例は多いのだ。それだけに、前頭筆頭の現役力士といっても弱冠20歳の青年を「野放し」にしてしまうような 協会の指導者不在の世界にあっては薬物汚染はあっという間にひろがってゆく恐れがある。強ければいいという安易な考えは禁物だ。協会は角界の閉鎖性や 独善的な体質を大きく変えてゆく「腕力」が必要だ。力持ちの集団に改革の真の「腕力」がいま強く望まれている。

 
 
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