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チベット騒乱をうけて、フランスでは「北京五輪開会式をボイコットすべきだ」の声があがり、これに対してクシュネル外相は
「支持しないが評価する」(3月19日報道)と述べた。イタリアでも同じような反応があった。
騒乱が起こる前、すでに男子マラソン世界新記録保持者ゲブレシラシエ(エチオピア)は大気汚染の中では走れないと欠場を表明した。
ついでIOC(国際オリンピック委員会)医事委員会は「マラソンなど耐久競技にリスクがありうる」と発表した。
これに楊外相はこう答える。「大部分の選手は北京の空気に満足している。多くの対策をとっており、空気はますますよくなる」と。
だが、日本や韓国はすざまじい黄砂に悩まされている。その黄砂には大気汚染物資が多く含まれていることが観測されているのだ。
これに対して日韓中3カ国が共同観測体制をすすめていく筈だったが、中国はなぜか突然、気象情報は国家機密なので公開できないと
言ってきたというから驚く。
食べ物でも、こんな事があった。北京五輪へアメリカ選手団が大量の食品空輸計画をしていると報道(2月)されると、中国はすかさず「持ち込みは認めない」
と牽制する。 ギョーザ事件が未解明のままのところに毒入り肉まん事故も起こったりしている日本としては中国の悪びれない態度には戸惑いを感じるばかりだ。
中国産食品の信頼は現地でも高くないのだ。北京市の30代女性は子どもの粉ミルクは主にヨーロッパや日本からの輸入品を選んでいる。そしてこう言う。
「経済的に余裕のある人はまず国内産は買わない」。
そんなさ中、湖北省で、例のギョーザ事件で問題になっている使用禁止の農薬メタミドホスを約5トン積んだトラックが横転し、約半分の2トン余が路上に
流出した。さらに河南省ナンバーのトラックが、やはり事故でメタミドホスを流出、有毒ガスが発生、数キロ先でも鼻をつく臭気が感じられたという
(3月2日報道)。 大気汚染、黄砂、食品などそれぞれが、批判されるとその倍の反論をしてくる。そこから透けてみえてくるものは国際社会のチームワークを乱す傍若無人
ぶりだ。
―そしてチベット騒乱でその極みに達した。国際人権団体の動きに対して、中国外務省の秦剛・副報道局長は記者会見(3月11日)で「人権をウォッチする
というが、視力に問題がある。白内障で、重度の弱視だ」と目の不自由な人をも傷つける言葉を発して人権団体を非難したのだから、唖然としてしまう。さらに
温家宝首相はチベット騒乱を「ダライ・ラマの策動」と断定した(3月19日報道)。指導者が一度出した結論が覆ることは一党独裁の中国ではまずありえない。
国際世論の反撃は必至だが、五輪ボイコットは中国を孤立させてしまうという“大人の判断”もある。中国はこれに対応してほしいのだが、どうやらそんなこと
は意に介さず、威信の誇示だけが頭にあるようだ。 こうして聖火は人権問題に火をつけながら、まるで障害物レースのように混迷のなかをリレーされてゆく。以後のコースも予断を許さない。
北京五輪はホント大丈夫か!?
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