2008年3月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★”おふくろの味”復活の好機を掴もう!
   
 いつか起こる…誰もが危惧していた事がついに起こってしまった。毒入りギョーザ事件が大きく報道されたのは1月31日だった。が、この事件は昨年12月末に千葉市で被害者が病院に駆け込んだことにはじまっていたのだ。食品の偽装事件が続発した挙句の果ての事件だった。今回も被害発生から公表まで1ヶ月。この度し難い隠蔽体質を露呈した天下り会社「日本たばこ産業」のぶざまさもめだった。消費者は日本の食に対する危機管理の危うさを痛感せざるをえなかったのである。

 事件の決着は中々つきそうにない。オリンピックをひかえた”国の事情”もあろうが”国の個性”もかなりのものである。が、グローバル化した時代の流れには逆らえないであろう。この事件発生でアメリカは下火になっていた中国からの輸入品問題―白血病治療薬、歯磨き粉、塗料に鉛を含んだおもちゃ、禁止薬を使った 養殖魚、ペットフードなどなどの騒動が再燃の兆しを見せている。

 中国からの輸入品頼りはアメリカ以上の日本である。日本冷凍食品協会によると国内に約4000種の中国製食品が出回り、1人あたり年間21`余を消費しているのが現実だ。大手スーパーからは中国製を撤去したら売り場は成り立たず、日本の食生活も成り立たないという声さえ聞こえてくるほどである。だからといって許されないことは許してはならない。あのギョーザの製造元の「天洋食品」がある中国・石家荘市郊外の農民は殺虫効果抜群の、しかし禁じられているメタミドホスを使っている。彼らは平気でこう言ってのける。「家族が食べる野菜には絶対に使わない。毒が怖いから」(朝日新聞2月15日付け)。

 安いから、便利だからといって安全性までゆだねてしまった食料事情の危機に震えた後に新しい動きが出てきたことを、今度の事件を通じてのせめてものプラス要素と捉えたいと思う。ギョーザ購買率は低くなったが日本産の皮やひき肉やニラを求めて手作りするようになった。イトーヨーカ堂は「手作りギョーザコーナー」を設け、ダイエーは2月第1週のギョーザの皮売上が5〜6割増えたという。これである。
 主婦たちの中から「家で作るのが1番」、「冷凍食品は厳密な衛生管理していて安心だというイメージがあったが、それがくつがえされ」、今更のように地産地消の意識を抱き始めてきたという声が大きくなってきている。肩肘はらない自然の声がいい。

 私たちの食卓はいまこそ手作りのおふくろの味を取り戻さねばならない。事件究明の道がすっきりしないことだけにとらわれずに、この際、埋没して久しい日本の食卓を考える絶好の機会ととらえてみよう。いま大きな課題となっている「食育」や「ひ弱な子どもたち」の問題の原点には日本本来の食卓があるのだ。ひとつでもふたつでも、この際、おふくろの味を取り戻したいものだ。ここから日本の食卓が、ひいては日本の農産物が元気を取り戻してくるのを願う。ギョーザ事件がその第一歩になれば、ピンチも大きなチャンスになろうというものではないか。

 
 
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