2008年1月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★勘違いの醜態をさらすな!
   
 勘違いしているのをみるほど不快な事はない。醜態そのものであり、情けない。
 昨年も様々な勘違いを見せつけられてきた。彼らはそれによって自らの人生を崩壊させるだけでなく、関係者の人格や生活にまで累を及ぼす。それなのに多くの場合、当人はさっぱりその事に気づいていないのだから始末が悪い。今年はもう御免蒙りたい。

 年末にはこんな勘違いが話題をまいた。守屋前防衛事務次官はさることながら、その夫人だ。茨城の農家に生まれ育ち、目立たないが綺麗だったと評判のよかった娘さんが、いつごろから自分を勘違いしてしまったのであろうか。“おねだり妻”や“女帝”への階段を得意気に上っていった。それはあまりにも醜く、暗澹たるものだった。

 もうひとつ、関東学院大学ラグビー部の大麻汚染。14人もの部員が夏合宿や海外遠征中に汚染されていった。春口監督が育て上げたチームは、伝統などものともせぬ自由奔放なエネルギーで6度も大学日本一を手にしてきたのだが、そのエネルギーを勘違いして舞い上がり、一挙に転落していった。おしみて余りある。

 こうした勘違いに必ず顔を出すのが医療の世界。情けない。こんな事があった。
 岐阜の開業医が73歳で亡くなったが、自宅の床下に現金16億円を隠していたというのだ。72歳の妻が相続税法違反の疑いで逮捕されたが、「現金のあることを知らなかった」と容疑を否認した。
 16億円もの現金を知らなかった妻も妻だが、医師も医師だ。床下に積み上げられた現金を眺めてはニヤリとしていたのであろうか。
 この医師は“医は算術”と医療を勘違いしていたのであろう。そうでもなければ、こんな現実離れした事は起こらない。
 あまりにもばかばかしくてこれ以上触れたくもないが、一言だけ。W・ムーア監督の映画「シッコ」(米)を観た医師で作家の南木佳士氏はこういった。この映画は「利潤のみを追求する医療の末路を明らかにしてくれる」。必見である。

 救急車が病院から拒否されて“放浪”する重苦しい現実の中で、医療は今や国際ビジネスにもなってきたという。バンコクの「メデカル・ツーリズム」は大手病院が日本語通訳を24時間配置し、日本の旅行会社と組んでお客の獲得に力をいれ、インド政府は「メデカル・ビザ」を導入し、長期滞在を可能にして治療目的の外国人を呼び込もうとしているというのだ。
 ここで1枚噛んでやろうと、(たとえば政治家や官僚の中に)医療のグローバル化などとうそぶきながら医療を患者不在の利潤追求と勘違いしていく手合いはいないのか。“国境なき医師団”とは全くちがう様相の底には闇が潜んでいるのではないかと心配になってくるというものだ。
 杞憂なら幸いである。

 
 
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