2007年6月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★感染症の診断技術 鳥インフルエンザやサーズ(重症急性呼吸器症候群)など悪名高い感染症をまるでバッタバッタとなぎ倒し…といった診断技術を、東大医科研と栄研化学が開発した。なにしろ、複数の感染症をいっぺんに調べ上げ、何に感染しているかがわかるというもの。これまではウイルスごとに調べ、手間がかかっていたものだが、それがわずか1〜2時間で6種類以上のウイルスについて、感染の有無が確認できるというのだ―。

 
 ★ウイルス合成技術 自然界にあるエボラウイルスは、もっとも危険な病原体に分類されている。だから、このウイルス研究はまるで宇宙服のような防護服を着用しなければならず、弱毒化の難しい極めて厄介な相手である。新興感染症の病原体となる強毒ウイルスに対抗できるワクチンをつくるには弱毒化したウイルス株が欠かせない。ここで登場するのが、東大医研の河岡義裕教授が開発したインフルエンザウイルスの合成技術だ。自由にウイルスの凶暴さをコントロールできるものとして、世界から高い評価を受けている。やはりというか、この合成技術を駆使することによってエボラウイルスを人工的に作ることに成功したという。これで、エボラ出血熱向けのワクチン開発も前進する―。

 
 ★狙撃するナノ技術 脱毛、吐き気などなど、抗がん剤の副作用は痛烈だ。これをすこしでも減らすことは出来ないか。理屈からいえば、患部だけに薬が作用し、正常な細胞には作用しないものであるなら副作用の心配は不要―ということではないか。つまりは、がん細胞だけを確実に狙撃出来れば万々才なのだ。これにはナノテク抗がん剤以外に道はない。が、日本は米国と並ぶナノテク先進国ではないか。10億分の1bという極々小サイズで物質を操るナノテクを駆使したがん細胞の狙撃兵を育成してほしいもの。勿論、未知の性質を持つナノ素材への不安も否定できない。安全性についても、よろしく―

  
 ★地獄の沙汰も金次第 たばこ税による国と地方の税収が年間実に2兆円以上になる。がんによる死者数を減らすうえでも、重要なファクターになっているはずの喫煙率低下問題だが、たばこ業界の反発によって、半減の削減数値目標などを示すことができないのだ。「健康日本21」でも業界の反対で数値目標を撤回せざるをえなかった。厚労省は挫折を繰り返している。「2兆円」が「喫煙率半減」をせせら笑っているのである―。

 
 ★命あっての物種 中国製の薬の原料に毒物が混入していた。被害はハバナで。かぜ薬の原料として「グリセリン」と表示があったが、実は格段に安い「ジエチレングリコール」が含まれていた。医薬品には使えない化学薬品である。そのかぜ薬をのんで少なくとも100人死亡が確認されたというのだ。一方、北米へ輸出されたペットフードに「メラミン」が違法添加されていたという。米とカナダで今年3月、これらのペットフードを食べた数百匹の犬と猫が死んだ。中国政府は毒性物質の混入を認めた。人命より儲けか―。
 
 
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