2007年1月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★大量死時代すぐそこに 正月早々からこんな話題で申し訳ないが、国連統計は日本の死亡率が激変し、2050年には敗戦直後と同じレベルになると指摘したのだ。そして日本に大量死時代がやってくるのは、高齢者の割合がどんどん増えているからだという。日本は先進国で最も国民が死なない国であるといわれてきたのだが、それもここまで…ままならないものである。

 
 ★妊娠からの緊急避妊薬 性交後に使う緊急避妊薬が密かに普及している。この薬は公的にはみとめられていないので、別の薬での代替策が普及し始め、そうした現実に対応してフランスで開発された「ノルレボ」の臨床実験が始まってもいる。だが厚労省は「コンドームの不使用につながり、性感染症が増える」と渋い顔…ままならないものである。

 
 ★コンドームを忘れたか 緊急避妊薬の普及に平行してコンドームを使わない人が増えている。消費量のピーク時(93年)に比べ約4割と激減しているのだ。ところが、これと逆比例してHIV感染者とエイズ患者は過去最高を記録している。コンドームは「面倒くさい?」「場がしらける?」。それとも刺激的な遊びに事欠かない若者のライフスタイルの変化から「セックスレスに?」。いずれにせよエイズ患者急増はすててはおけない。エイズの即日検査(2時間で結果がわかる)の実施などを呼びかけてもいるのだが…これまたままならないのである。

  
 ★薬物依存症からの脱出 心を破壊してゆく薬物をやめたくてもやめられない、そんな依存症に苦悩する人たちはいったいどの位いるのだろうか。覚せい剤、シンナー、大麻の三大違法薬物を一度でも使ったことのある人は200万〜300万人という(国立精神・神経センター、05年推計)。依存症の裾野はかなり広いのだ。一方で、いわばその一翼を担っている(?)のが、酒とたばこ。喫煙&飲酒者は食道かんになる危険性は9〜11倍になると警告するのは石川敦医師(東北大)。ところが、この7月のたばこ増税をきっかけに禁煙を決心した人は6割いたが、半年で半数が断念してしまった。まして麻薬ともなれば…ままならないのである。

 
 ★強毒性インフルエンザ 鳥保有のウイルスが変異して人に感染しやすくなり大流行を引き起こす心配が広がっている。アジアを中心に広がるH5N1型が「犯人」だ。これは人に感染しにくいものとはいえ、感染すると死亡率6割と毒性が極めて強い。だが日本での対策は不十分。治療薬「タミフル」の備蓄は必要数の半分程度でワクチン開発にも時間がかかる。危機感は高まるばかりである。そんなさ中の先月中旬には、韓国のウズラが強毒性ウイルスに感染、1千羽余が死んでいるのが発見された。それが警戒地域の外であった。いま一番大切なのは封じ込めなのだが…これがままならないのだ。
 
 
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