2006年10月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★朝起き出来ない子 朝起きられないまま、朝食もとらず、ずるずると学校を休んでしまう―こんな子が多くなった。これをすべて「怠け癖」と片付けてはいけない。「起立性調節障害」という思春期特有の病気があるという。中学生の約1割が午前中を中心に頭痛、倦怠感、食欲不振、立ちくらみなどの症状が出る。その約4割が「不登校」の子だ。日本小児心身医学会が診断指針を作成したが、朝、気分よく起きられない子に救いの手を!

 
 ★看護師を発掘せよ 出産や子育てを機に離職する「潜在看護師」は全国に約55万人(厚労省推計)。今年の看護師不足は4万1600人だから、この「潜在看護師」の1割程度が再就業すれば、不足分は解決してしまうのだ。看護協会はこの10月からインターネットを通して就労意識調査、再就労支援策に役立てたいという。一人でも多くの呼応を!

 
 ★無医村地区を支援 看護師もそうだが、相変わらず医師不足も深刻。50人以上が暮らす半径4`以内に医師がいない地区を無医村地区というが、これが全国に787カ所。年々減り続けているとはいえ、離島の6割近くは無医島だ。厚労省は来年度からへき地・離島へは医師、看護師らがヘリで巡回診療するほか、遠くの医療機関で出産せざるをえない家族には宿泊費を補助することになった。これが報道された9月6日は時あたかも悠仁親王ご誕生で祝福ムードにわいた。これを機に支援策の確実な実施を!

  
 ★ピロリ菌と胃がん 胃がんの正体見たりピロリ菌―そんな感じのピロリ菌(リコバクターピロリ)は前々から注目されてきたが、このほど厚労省研究班の大規模疫学調査がまとまった。それによると、ピロリ菌に感染したことのある人は感染していない人に比べ胃がんになるリスクがなんと10倍とはねあがるという。厄介なことに日本人は2人に1人が感染している。除菌による胃がん防止の道が少しでも早く開けていくことを!

 
 ★がんの痛み緩和 がんといえば痛み。半端じゃない。救いの手は(モルヒネなどの)クスリ以外にない。だが、10人に1人の医師が薬物依存を恐れ躊躇する。さらに半数近くの医師が基本的な知識不足だという。そういう医師はとりあえず次の言葉をかみしめてほしい。「痛みをとるためにモルヒネを服用しても中毒になることはありません」(北里大病院・的場元弘)、「90%以上のがんの痛みはほぼ完全に除くことが出来る」(医療ビジネスセンター代表・浜六郎)、「その国の医療用麻薬使用量と、その国の文化度は相関しているともいわれている」(『がんばらない』の著者・鎌田實)、「がん患者は痛みに対してモルヒネを含めた適切な鎮痛剤で治療される権利があり、医師はそうする義務がある」(WHO指針)。 ―が、享楽と悪事の側面は絶対に許されないのは勿論だ。アフガニスタンではアヘンの原料となるケシの作付面積が前年より6割も増加、タリバーン勢力の資金源のひとつとなっているといわれていることなど、その典型例の一つ。クスリが綾(あや)なす光と影!
 
 
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