2006年3月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★「ICU」が空を飛ぶ 防衛庁が「機動衛生隊」を新設する。これは航空自衛隊の輸送機内に、コンテナ型の「機動衛生ユニット」を搭載し、集中治療室(ICU)並みの高度な医療体制を施しながら重症病患者を遠隔地の病院へ緊急移送するもの。小牧基地(愛知)に常駐する。阪神大震災の教訓から研究を重ね、ようやく今年度から実現することになった。大災害に対しての力強い助っ人登場である。

 
 ★ドクターも空を飛ぶ これは民間の空飛ぶ救命救急センターというべきか。医師と看護師がヘリで事故や災害現場に飛び、救命措置をしながら病院に運び込む。外傷は最初の1時間が勝負といわれるだけに、初期治療の切り札となるこの「ドクター・ヘリ」、本格運航は01年4月に川崎医大附属病院(倉敷市)で始まり、現在1道8県で計10機がスタンバイしている。

 
 ★これは「空飛ぶ寄生虫」 花粉症、喘息、アトピーなどアレルギーに悩む人が毎年のように増えている。この現象を「物質文明の追求で生じた免疫機能失調症」とみるのは理化学研究所の谷口克・研究センター長。抗生物質が大量に投入され、まるで無菌室のような清潔社会では人の免疫機能がどんどん失われてゆくのである。谷口・センター長はこうも言う。「乳幼児期は抗生物質使用を控えるなど、適度に不衛生なほうがアレルギーになりにくい」。そういえば9年前、藤田紘一郎・東京医科歯科大学医学部教授の『空飛ぶ寄生虫』(講談社刊)を読んで、“目から鱗(うろこ)が落ちる”思いになったのを思い起こす。本紙でも平成9年3月(192号)にトップ記事としてとりあげているが“寄生虫博士”は軽妙な筆致でこうした行き過ぎた「清潔社会」に逸早く警鐘を鳴らしていたのである。

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 寄生虫といえば東京・目黒に寄生虫館があるのをご存知?標本約300点が並ぶ。このところ一般の来館者が増えているだけでなく、サナダムシの成虫を描いたランチバックをはじめ“寄生虫グッズ”を来館者のリクエストにこたえて作り始めたという。怖いもの見たさ?行き過ぎた清潔社会への反省?

  
 ★ウイルスも飛んでくる ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザの大流行をどう封じ込めるか。新春早々に東京で国際会議がひらかれた。WHO顧問の押谷仁・東北大教授は発生からWHOが連絡を受けて行動するまでの期間は「2週間以内」と強調。手遅れになりかねない。そうでなくても、かつてのスペイン風邪と大違いで、今やヒトも鳥も空を飛ぶように地球をスピード交流しているのだ。そんな危機感のなか、鳥からヒトへのウイルス感染死の地域は東南アや中国から中東、アフリカへと、どんどん広がり、野生の白鳥などへの感染事例もあっという間にヨーロッパ全域に及んでしまった。イタリアでは養鶏の仕事がなくなったトラック運転手が妻子を道ずれに無理心中するという痛ましい事件まで起きている状態である。

 
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