2005年11月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★鳥インフルエンザ 20世紀初頭のスペイン風邪は世界で数千万人の死者を出した。これは鳥インフルエンザウイルスが突然変異で人から人への感染力を持ったのが原因と考えられている。そしていま21世紀の初頭に、鳥インフルエンザは世界を恐怖に陥れようとしている。当時に比べ医療水準は格段に向上しているはずだ。第2のスペイン風邪は何としても防ぎたい。いま、鳥インフルエンザはアジアから欧州へ拡大の気配をみせ、ルーマニア、トルコ、ギリシャ、さらにロシア欧州部でも確認されている。WHOは世界的な大流行に備える必要があることを声をからして呼びかけ、国連も9月下旬に「鳥インフルエンザ調整官」を新設した。世界はいま迫り来る脅威に戦々恐々の状態にあることは確かだ。

 
 ★大災害医療チーム 「痴呆症」を「認知症」に呼称を変更したのは昨年12月だった。あれから1年たらずが過ぎようとする9月31日、「日本痴呆学会」は「日本認知症学会」に名称を変更する方針をようやく決めた。学会というのは鈍いのか、それとも慎重なのか。こうした反応には苛立つものがあるが、いうなればこれは学会の名称のこと。だが、こちらは災害救助隊という行政の問題である。放ってはおけない。世界的な災害が多い昨今、さすが現在では「日本はカネは出すが人は出さない」といった批判をあびることはなくなった。たとえば、インド洋大津波の時はスリランカ被災地に真っ先に駆けつけたのは日本の医療チームだった。いまや医師、看護師、消防レスキューを中心に約3千人の海外派遣の精鋭が待機している。問題はここからだ。海外は外務省、国内は厚生労働省というタテ割り行政のせいで、この国際緊急救助隊が国内の大災害医療ではその力を発揮することができないでいる。法律がそうなっているなら、一刻も早く改正を。行政は果断に!

 
 ★少子化対策の推進 先月、少子化対策の推進室がやっと内閣府に設けられた。ゆっくり・のんびりもはなはだしい。フランスでは今年から「3人っ子」優遇策に乗り出している。イギリスでは新生児1人当たり250ポンド(約5万円)を支給し、「チャイルド・トラスト・ファンド」という貯蓄優遇策を導入、子どもの将来に備えた資産形成を後押ししている。日本だってそれなりに子育て支援をしているはずなのだが、英仏に積極的な姿勢を感じても日本にそれが感じられないのはなぜ?

  
 ★AEDの効果抜群 心臓がけいれんする心室細動の処置は一刻を争う。そんな時の救いの神が「AED」である。日本語で「自動体外式除細動器」と書くと、なにやら仰々(ぎょうぎょう)しくなってしまうが、これが昨年7月から一般の人でも扱えるようになった(5月の本欄で紹介)とはいえ、1台の値段が数10万円もするということもあって普及はスローペースだ。だが前向きな姿勢があちこちでみられるのは喜ばしい。たとえば愛知万博会場での活躍は記憶に新しい。東京メトロは地下鉄サリン事件を教訓にAED設置と活用に積極的な展開をみせている。

 
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