2005年7月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★モルヒネの効用 がん患者が激痛に苛(さいな)まれながらベッドでのたうち回る。「がんの痛みはがまんしなくてもいい。薬を上手に使えば9割の痛みはとれる」「痛みをとるためにモルヒネを服用しても中毒になることはない」と前々から言われてきた。だが、最近の調査によると、がん患者の治療に携わる医師の10人に1人が「薬物依存を起こすおそれがある」と医療用モルヒネの使用をためらっているのだそうだ。一方患者にも中毒のおそれを払拭出来ない側面もあるが…。いずれにせよ、痛みが十分にコントロールされず、そのために苦しむがん患者を一人でもすくなくする努力を望みたい。
 
 ★マリファナの罪 これはアメリカ。医療目的であれマリファナ吸引は「連邦犯罪」にあたると、6月、連邦最高裁が判断を下した。だが、カリフォルニア、ハワイ、ネバダ、オレゴンなどの州では医療の目的でマリファナを合法化している。今回の最高裁判断で、州法はピンチに立ち、吸引患者たちへの風当たりは強くなるであろう。逆説的にいえば、先月の本欄で横浜の女医が手術現場がこわくて薬物依存になっていた、というお粗末な話を伝えたが、身勝手な医師がいるかぎり、問題の本質を克服する道は遠いというものだ。
 
 ★HIV逃亡 医師の意識の問題をもう一つ。厚労省研究班の調べによると、全国の歯科医の3割がエイズウイルス(HIV)感染者の診療を断わっているという。拒否理由の多くは「消毒・滅菌が困難」であるからというのだ。これではまるで敵前逃亡のようである。研究班は「感染力は極めて弱く、はるかに感染力が高い肝炎対策がとられていれば問題はない。むしろ拒否は感染予防に無意味なだけでなく、あらゆる感染症への対策がおろそかになりかえって危険だ」と歯科医が意識を変えるよう訴えている。
  
 ★性感染逃亡 これは20代女性の意識の問題。性感染症に関心を持ち、クラミジア感染症や淋菌感染症の名前を知っており、自分の周りにかかっている人がいるかもしれないと身近に感じていながら、ほとんどの人が自分だけはかかっていないと考えている(STD啓発ワーキンググループのネット調査)というのだ。このひとりよがりで身勝手な意識が性感染症を増やす背景の一つになっていることは確かである。
 
 ★農薬を迎撃 農薬(殺虫剤も同様)による健康被害の訴えは年々多くなっている。農薬は田畑だけではない。ガーデニング、公園、街路、ビル、ホテル、電車、航空機…いたるところで使われている。手入れされた美しい庭にはトゲがある。清潔感のあるビルや乗り物にも殺虫剤という農薬のトゲがある。このトゲ抜きに新手が登場した。石川島播磨重工業が、大量の電子を高速で衝突させて農産物を滅菌する装置を創ったのはその一例。外国からのオファーもきているというが、この電子線は放射線の一種なので解禁にはまだ心理的な抵抗感というネックがあるようだ。さて―。
 
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