2005年6月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★信頼失墜 多くの人命を預かる職業に従事している人たち、たとえば電車の運転士、飛行機のパイロット…そして医師のなかにどう見ても不適格な者がいると思うと、ぞっとする。5月10日に横浜にこんな医師がいることが判明した。神奈川県立こども医療センターの女性医師、29歳。手術の不安や緊張を和らげるため、全身麻酔の前後に使用される向精神薬の「ミダゾラム」希釈液を自分の手の甲に7回注射していたというのだ。その現場を上司に見つかり自宅待機しているというが、薬物に依存しないと自分の仕事が出来ないのか!この薬は麻薬取締法で厳重管理が求められているが、同センターの薬剤管理のズサンさも問われるものだ。この組織にこんな欠陥医師。JR宝塚線(福知山線)の脱線大事故を連想してしまう。困ったものである。
 
 ★大台突破 エイズを発症した患者が累計でついに1万人を超えてしまった(厚労省集計)。昨年の集計をみると、感染780、発症385人といずれも過去最多を記録している。先進国では減少傾向のあるなかで、日本だけが増加に歯止めがかからない状況が続いており、10代、20代の若者の感染が目立っているというのだから大問題だ。学校での予防教育や「即日検査」システムの導入などその対策はいっこうに進んでいない。いつ感染してもおかしくない時代であるという危機意識が希薄なのだ。ちなみにコンドーム出荷量はピークだった93年の6割、厚労省のエイズ関連予算も00年度の127億円から05年度は86億円と3割以上が落ち込んでいるというから、困ったものである。
 
 ★献血離れ 全国的に輸血用血液の不足が心配されている。この3月、「全血液型平均74%」と危機的状況に落ちてしまった。厚労省や日赤の懸命な呼びかけで少しは回復したかにみえたが、長期的には日を追うようにきつくなっていくようだ。献血は16〜69歳の人ができるが、気になるのは主力となる10〜20代の献血者が減少していることである。筆者の周辺にはまるで献血が趣味(?)のように熱い関心を持ち、実践している若者がいるが、風変わり者とみられているようなのである。それはともかくとして、総じて少子化を上回る勢いで若者の献血離れは進んでおり、そこには関心を持つか持たないかという若者の意識の問題が横たわっているのは間違いない。これまた困ったテーマである。
  
 ★一歩前進 困ってばかりはいられない。最後に希望をもたせる話題をひとつ。新型肺炎のSARS(重症急性呼吸器症候群)は03年にアジアを中心に拡大したが、まだ予防・治療は確立していない。そんな中、近畿中央胸部疾患センターなどが、予防や治療に有望なワクチンの開発を進めているということが報じられていた(朝日新聞)。再び流行してからでは遅い。こうした研究が確実に続けられているのを知るのは嬉しい。このワクチンはコロナウイルスの膜たんぱく質を作るDNAを材料にしたもので、2年後に人間での臨床試験を開始し、5年後には遺伝子治療法として実用化する計画だという。期待したい。
 
 
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