2005年3月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★喫煙の線引き 超高校級と騒がれプロに入った東北高のダルビッシュ投手(18)が日ハム那覇キャンプ中、市内パチンコ店で喫煙していた写真が週刊誌に掲載された。昨夏も彼の喫煙問題が話題になった。「再犯」である。球団は2月21日から謹慎処分にし、東北高は停学処分に。ちやほやされて、3月1日に卒業式を残している高校生であることをすっかり忘れてしまったというお粗末さ。
 喫煙には年齢の線引きがあるのは勿論だが、米ミシガンのある企業では全社員の就業時間以外でも禁煙を徹底させる規則を導入した。自宅喫煙してもクビ。この線引きを極端と思うだろうか。自宅で子どもの誤飲事故が問題になっており、その4割が煙草で最多という実態(厚労省調査)に接すると、あながち極端とは言い切れない面もある。「乳幼児の口は直径3cm程度までのものは口に入ってしまう」というから用心に越したことはない。
 
 ★「死」の線引き 2月20日、北海道北見市での出来事。若い女性(27)が堤防で倒れていた。救急車が駆けつけた。隊員は「死後硬直」と判断し、北見署の遺体安置所に搬送。が、なんと生きていることに検視の医師が気付き、慌てて病院に急送した。外は低温(零下2・2度)で「仮死状態」だったが遺体安置所の室温は5度。これで「息を吹き返した」というのである。
 ところで、この事件と同列には扱えないが、臓器提供に従事する専門家5,000人にアンケートしたところ、「脳死は妥当な死の判定法か」の項目に「わからない」が半数だったという結果(厚労省調査)がでている。死を判断するプロでも脳死の受け止め方が違う。終末期医療でもそうだが、「人の死」をどこで線引きすればよいのか―。
 
 ★問診教育 医学の知識だけでなく、模擬患者に問診してコミュニケーションが図れるかどうかという「患者対応テスト」がいよいよ今年度から、医・歯学生の共通試験として導入されることになった。4年生が受け、合否は5年生への進級判断材料にするという。模擬患者との模擬問診はすでに一部の大学で採用、実施され、注目されているが「患者中心の質の高い医療を担う医師を育成するための重要なステップアップ」と文科省。
  
 ★漢方教育 明治政府がドイツ医学を採用して以来、医学教育で130年間も打ち捨てられていた漢方が復活する。部分を追求する西欧の科学主義が行き詰まり、慢性病や老化が焦点となってきた時代と平行して体と心を結ぶ全人的な漢方がクローズアップされてきたのである。これを受けて、昨春から全国80の医科大、医学部のすべてで漢方医学の授業が行われるようになったが、今後10年たらずで、漢方薬は医療現場にすっかり溶け込むであろうとさえ言われてきている。そして、これまでの漢方がミニ流派にわざわいされていたのを払拭し、EBM(根拠に基づく医療)にもかなう客観的な教科書づくりも完成、今春はその英訳本も出版され、世界に発信されるという。時代の流れである。
 
 
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