待合室
2005年1月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★食の選択 お正月ロードショーで米国映画「スーパーサイズ・ミー」というドキュメンタリー映画が紹介された。映画のテーマは30日間、3食マクドナルドのメニューばかり食べていると、体はどうなるのか。結論は肥満である。肥満患者については先月触れたが、成人の6割が肥満といわれ、子どもの肥満症も倍増している米国。ワラジのようなステーキ、円盤のようなハンバーガー、抱え持つような容器の清涼飲料…。この映画は社会と個人と食との関係に一石を投じているようで、ファーストフードを多用する長距離トラックの運転手やフライトポテトやピザなどの冷凍食品ばかりの学校給食を心配する親たちの間に反響が広がっているようだ。こうした状況はスピードの差こそあれ、やがて日本も!
 
 ★味覚障害 これはテレビ。TBS「ニュースの森」(12月16日放映)が凄まじいまでの映像を伝えてくれた。ケチャッパーの主婦。豆腐も刺身もケチャップで真っ赤。1日に5キロも食べる。かたやマヨラーの女子高生。ソフトクリームのようにマヨネーズをブタ丼にかけて食べる。マヨネーズがないと味がわからないと、いつも持ち歩く。日に3キロたべる。医師の検査でこの女子高生は完全な味覚障害。推定で年間24万人が新たに味覚障害になっているという。そのメカニズムは舌の表面にある味のセンサー・味蕾(みらい)の働きが衰えることで起こるもので、味蕾の働きを活発にするには亜鉛やその他のミネラルが必要不可欠だ。ところがここでも、加工食品や清涼飲料水に含まれる食品添加物は亜鉛などのミネラルの吸収を妨げるのだ。あなたの未来は味蕾にかかっているともいえる。
 
 ★呼び名考 呼び名によってイメージががらりと変ることがある。新潟中越地震で、地盤が破壊され、住んでいた土地が一瞬にしてダムに変わってしまった。この悲劇のダムを「自然ダム」と呼んではならない。美しい自然を一瞬イメージしてしまい住民の苦悩を洗い流してしまう。これは「災害ダム」と言うべきだ。ところで、「痴呆(ちほう)」という呼称をやめ「認知症」に改める方向を厚労省が打ち出した。「痴呆」は不快感や軽蔑した感じを伴い、「何もわからず、何もできない」との誤解を招き易い。「自然ダム」も「痴呆」も当事者の心を傷つける言葉であり、実態の理解を妨げるものでしかない。
  
 ★門戸開放 ここでも呼び名がまつわってくる。日本への看護師の労働派遣が認められることになった比国。比国の看護師にたいして門戸開放を決めた日本。すでに米国―比国では門戸が開放されている。そこに起こってきたのは、比国で医師から看護師への転身が続出しているという状況だ。理由は高収入の米国で働くためだ。医師国家試験で1位になった青年が米国の看護師の資格試験に合格し、この春、看護師として渡米するという。現在358人以上の医師が看護師として出国している。「日本の門戸開放は朗報だ」とその青年は言っている。「門戸開放」といえば聞こえはいいが、見方を変えれば看護労働を安易に手に入れようと、札束で肩をたたいているのではないか。複雑な思いがする。
 
 
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