待合室
2004年12月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★高齢被災 はるか縄文時代、平均寿命は15歳だった。いまや健康寿命は女77・7歳、男72・3歳で世界のトップにたった。これを新潟中越地震が襲った。被災地の4人に1人が65歳以上の高齢者である。Tさん、女性、85歳。地震直撃まで長岡市内で、一人暮らしをしていたが家がつぶれ避難所生活となった。介助する人手の足りない避難所で初めて車イス生活を余儀なくされた。足が弱る→立てなくなる→歩けなくなる…自立度が急速になえてくる。仮説トイレを使うにも手すりがない、明かりがない。食べ物も体調に応じて摂ることは許されない。この痛烈な現実を寿命世界一の国は鋭く突きつけられている。
 
 ★急性脳症 この秋の話題のひとつに急性脳症を引き起こした食用キノコ「スギヒラタケ」のナゾがある。発端はこれまた新潟県であった。全体が白く、扇形で見掛けのよさに加え、味もいいので珍重されてきた。それがなぜ今年になって急性脳症で相次ぎ死者を出したのか。急性脳症とは脳障害が特定できない場合の総称である。病状がウイルスや細菌による感染症か、キノコに含まれる化学成分による中毒なのか今もってわからない。原因物質が特定できないのだから専門家も困惑、ナゾは深まるばかりだ。
 
 ★肥満患者 「肥満は病気である」と自覚したほうがいい。体重を身長の2乗で割った値が25以上なら肥満である。あなたはどう?25以上の人は現在2300万人にも達し、それも増え続けている。このうち半数以上は確かに何の病気もみられないが、糖尿病や高血圧、高脂血病など多くの合併症と直結している危険がある。肥満の専門医は少ない。医師が病院で肥満を治療しても保険の適用にならないからだ。合併症を併発して初めて肥満症という病名がつき保険対象になる始末。自己管理が求められてくる。予防には運動が不可欠なのだが、肥満増加と平行して「歩く」量が減っているというのが現状だ。
  
 ★未病大敵 「一病息災」ならぬ「未病大敵」。肥満はまさにその典型だが、未病とは病気ではないが健康でもない中間の症状をいう。しびれやだるさがあるのに健康診断で異状がみつからない、自覚症状がない。だが血圧やコレステロール値が正常でない人は未病といえる。「こむら返り」に悩んでいた人が精密検査を受けたら脳に腫瘍(しゅよう)が見つかったという例がある。
 
 ★性差医療 漢方医学が体系化され始めた1800年も前に、すでに医書は女性むけ処方に特に一章を設けて妊娠、出産以外に女性の病気について論じ、薬の効果についても性差のあることを認識していた。事実、現代医学でも男女間で多くの検査値に差があることがわかってきたこともあり、今ようやく女性専用外来が各地に設けられるところまできた。この際、女性外来では女性医師が専門領域に限定せず患者の話をじっくりと聴き、細分化されてきた医療を見直すところまでいってほしい。そこに本来の医療の姿が見えてくる。
 
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