待合室
2004年11月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★ポリオ 世界からポリオ(小児マヒ)を根絶するのが夢ではなくなった。これまで超えられなかった難問が一つ一つ解決に向かっている。全世界の8割を占めるインドでは最大の壁だった「宗教の違い」を克服しワクチン接種が広まっており、ナイジェリアでも同じイスラム圏のインドネシア製ワクチンを受け入れ始めた。今年はインド、パキスタンで劇的な発生数が減少、年内制圧も可能という展望(WHO)もひらけてきたという。ポリオ根絶の目標は、まず世界全体で05年に患者発生をなくし、3年間新しい患者が出ないことを確認したうえで08年をめどに根絶宣言を出すことらしいが、さてー。
 
 ★エイズ これは深刻の一途をノンストップ。世界で感染率のもっとも高いアフリカ南部のザンビアでは成人の5人に1人が感染者であり、年に12万人が死亡している。平均寿命が32歳という地を這うような貧困層が7割。これが対策の壁になっており、「エイズ禍で国が滅ぶ」という悲鳴まで聞こえてくる。欧米と同じ対策だけでは解決できない問題の根深さと悩みが横たわっている。
 
 ★依存症 犯罪の陰に薬物あり。今年1〜8月に摘発された殺人、強盗犯などの依存症は薬物だけではない。インターネットにもれっきとした依存症がある。これまた深刻だ。会社を辞め、部屋に閉じこもり、食事はコンビニのおにぎりなどですませ、そんな食事の時間もひたすらパソコンに向かってバーチャル世界にのめりこんでゆく。体を動かすのは万年床とパソコンの間だけ。挙句の果ては肥満、離婚…。心身を確実に蝕んでいる。その実態がおそまきながら問題視されるようになった。
  
 ★肝移植 生体肝移植で自分の肝臓の一部を提供した人たちの必死の思いを考えると頭が下がる。だが、裏には厳しい現実がある。こうした人たちの半分近くが傷口のマヒやケロイド、胃腸の痛み、気分の落ち込みなど心身に不調を感じながら生活をしている(日本肝移植研究会アンケート)ということだ。提供者の90オが提供してよかったと感じているが、予想よりつらかったと答えた人も15オいたという。是非この人たちのケアには万全を期してほしい。
 
 ★ペット ハムスターに指をかまれた男性が激しいアレルギー反応「アナフィラキジー」を起こして死亡する事件がおこった。すでに「ハムスターぜんそく」が目立ち始めたのは95年頃からだ。それが遂に死亡事件引き起こすにいたった。ハムスターは単独生活が習性なので、手をいきなりケージにいれると過剰な反応を起こしてしまう。ある程度距離をおくことが必要だ。専門家は指摘する。「過剰に触れられ、人扱いされることが、動物にとって幸せとはいえません」。含蓄のある言葉だ。犬や猫や鳥を飼う場合もおなじであろう。かわいさあまって、実は動物を虐待しているかも知れないのである。
 
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