待合室
2004年6月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★飲 酒 酒のあるメーカーが20〜30代独身男女のネット調査(2月下旬)をした。それによると、女性の6割が付き合うなら「飲める彼」を希望、男女ともに、一緒に飲むことで交際が進展したという。まさに潤滑油、百薬の長である。ところが、一方で、失恋してやけ酒を飲んだことがあるのは男性38%、女性44%。アルコールの依存症的側面に女性の4割がとりこまれているともいえよう。そこにはキッチン・ドリンカーなど依存症に落ち込む危険が胚胎しているということだ。
 
 ★喫 煙 「…万一、喫煙した場合、自主退学することを誓約いたします」。これは名古屋女子大・女子短大の新入生全員に提出させた誓約書である。「女性差別だ」といった声がもちあがったが、「妊娠・出産期の悪影響がはっきりしている。女性は現実として次世代へのリスクを負っている」からと大学当局は断行。受動喫煙防止を定めた健康増進法が施行されてこの5月でまる1年。完全分煙や完全禁煙に本腰をいれて取り組む女子大学の登場である。ご時世というべきか。
 
 ★薬 物 フランスの保健医療研究所などの調査によると、同国の高校生(18歳)の半数以上が大麻を体験し、男子では2割以上が常用していることがわかった。1回でも吸ったことがある生徒は男子66%、女子52%。中学生の14〜15歳でも男子の25%、女子の17%が体験者で低年齢化も進んでいるという。医療での薬漬けや生活改善薬と称する市販薬がふえている実態もさることながら、薬物(麻薬や覚せい剤)依存症が深刻なのは洋の東西を問わない。ところで、これは地球の裏側の国、アルゼンチンでの出来事。「神」にたとえられるサッカーの名選手・マラドーナの体を蝕んでいるのがコカインなどの薬物中毒であることは周知の事実。今年にはいって心臓疾患などで入院したが、一時退院。医師の助言に従わずゴルフをするなどして再入院。現在は薬物中毒者のリハビリ施設に収容されている。かつての「神」はいま主治医に「目を覚まし、自らの行動に責任を持って欲しい」とクギをさされている。「神」をも引きずり落とす薬物の恐怖―。
  
 ★提 言 ここで依存症に関連して新刊書(5月5日刊)を紹介しておく。「神山五郎の健康談義」(叢文社・1500円)はサブタイトルに「平成養生訓」と銘打っているように、人生における目的達成という視点に立ったドクターが現代人の心の病にやんわりと切り込み、その諸相を描いてゆく。著者は現在、NPO法人「アパリ・クリニック・上野」(〒110・0015 東京都台東区東上野6〜21〜8 FAX03・5830・1791)で、自分の力だけでは回復のままならない難病といわれる薬物依存症に真正面から取り組んでいる。それだけに、病的依存症を誘うアルコール、たばこ、薬物をめぐっての提言には含蓄がある。「やめなさい・減らしなさい・ダメ・絶対!」といった脅しは何の役にも立たない。リハビリは拷問ではない。頑張らずに・おおらかに…。ご一読をすすめる。
 
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