待合室
2004年3月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★花粉症 国民の1割が花粉症。花粉はすでに1月から飛び始めている。今年の花粉は少ないと予報されているが、油断大敵。症状が出る2週間ぐらい前から薬を飲み始めよう。症状が出始めてからでは遅い。先手必勝である。薬は年々改良され、眠くなりにくい抗ヒスタミン薬や新薬も開発され、減感作療法も有効率を上げている。そんなあの手この手の治療のなかで、八尾和夫教授(北里大学病院)が勧める鼻粘膜の化学剤手術というのがある。効果が何年も続き、レーザーより簡単で再発が少ないといわれている。化学剤として使うトリクロール酢酸は古いドイツの医学書に別の鼻づまりの治療法として載っているのを取り上げ、現代の花粉症治療によみがえらせたという。温故知新。
 
 ★感染症 いま警戒されているのが鳥インフルエンザ。ベトナム・ハノイでは死者5人をだした。鳥インフルエンザウイルスが人から人へ感染を可能にする変異は現在のところ起きていないが、WHO(世界保健機構)は新型出現を警戒している。日本からは金川修造医師がハノイの病院に派遣され、院内感染対策などの指導にあたっている。「SARSの時ほどピリピリしていない」というが、「感染症に国境はない」という言葉は重い。中世のペストは世界で7千万人が死亡、1918年のスペイン風邪では4千万人が死んだ。交通の大量高速化や人口の過密による国際的な難問に積極的に立ち向かう必要がある。
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 鳥もさることながら、ペットから人にうつる病気を人畜共通感染症というが、日本国内で発症するもの約50種、そのうち犬や猫などの小動物から感染するものは約30種といわれる。最近、アライ熊の回虫が人に感染すると脳障害を引き起こすことがわかった。
 
 ★漢方薬 「日本人さえあまり知らない誇るべき事実がある。伝統生薬である漢方のたぐいまれな価値である」と外国人の医師(慶大医学部訪問助教授)に賞賛されると日本人として耳が痛い。同助教授は、西洋医学を修めなくてもいい伝統医と違い「日本の漢方処方医は西洋医学の知識も備えている」と、両医学の長所を生かせる土壌が日本にあることを、明快に指摘する。いまや先進国は高齢化で増大する医療費を抑制するのが大きな課題となっているが、「日本は低コストで安全な漢方を広め、世界の医療に貢献すべきだ」と提言する。これまた耳が痛い。
  
 ★放射線 漢方薬とまるで対極にあるのが、この放射線問題。放射線診断による被曝(ひばく)が原因の発がんは日本が最高なそうだ。英オックスホード大学の研究である。「診断によるがんの早期発見のメリットを正しく評価していない」という批判もあるが、そのメリットの見極めが日本では甘いのではないかという反省の声もある。見ようによっては、薬をまるでスーパーの買い物袋のようにぶら下げて持ち帰るといった風景とも重なってくる。医療費抑制の課題はあっちにもこっちにも―。
 
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