待合室
2004年1月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★救急態勢 運ばれる救急センターによって人の命が助かったり死亡したりする格差がある。恐ろしいことだが、これが現実だ。そこで日本救急医学会と日本外傷学会が今月、救急現場のレベルアップをめざして「外傷データバンク」を発足させる。―と、報じられたのは昨年の11月。発足しただろうか?各地のデータを集合し、これをもとに治療の指標を確立して救急態勢の見直しを促し、救急医療の技術向上にもつながるというのだから、真剣に取り組んでほしいものである。
 ちなみにこんな恐ろしいデータがある。厚労省の調査では、交通事故などで運ばれて死亡した患者の約4割(1割なんてもんじゃない!)は適切な治療を受けていれば助かった可能性があるというのだ。
 
 ★復讐せよ 1秒でも早く―。これが人の命にかかわる救急なのだが、救急車が到着すると看護師はまず救急隊員にお茶を出す慣習のある病院があるといわれたら、どうする?
 こんな現状に怒りのペンをふるった本が「医者に復讐せよ!」(氷川剛著)である。医療過誤などが絶えない構造を痛烈に告発している。

 つい最近、といっても昨年11月のことだが、同月20日付けの新聞をひらいてみる。この日、社会面のほとんど全部をつかって報道されたのは医療ミスの記事だ。寒気がする。難聴の幼児の右耳を間違えて切開してしまった。「あってはならない事故」と例によって例のような院長談話。(東京医大病院)、肺ガンの女性患者の手術中、動脈を損傷して死なせてしまった(京大病院)、女性患者が別の患者の鎮痛薬を投与され5日後に死亡した(秋田県湯沢・佐藤病院)…。前掲の本には「殺されないための病院の見分け方」も詳細に紹介されている。この際、運転免許のように医師免許も更新してゆくシステムを採れないか?昨年中に死を招いた医療ミスに関わりあった医療従事者たちはどんな気持ちで年を越したのであろうか。こんな「不良」達の免許取り消しや停止をするシステムはある。が、残念ながら取り消されたケースはほとんど耳にしない。
 ちなみに、飲酒して治療した患者が死亡したのに刑事罰は受けなかった医師がいると前掲の本は指摘している。
 
 ★敵を知る 戦うには敵を知らねばならない。冷え込みが一段と厳しくなるにつれてSARS発生を想定した訓練が各地で行われている。「敵」の正体・ウイルスはかなり明らかになってきた。しかし米ピッツバーグ大学などのチームはサルを使っての実験で「SARSワクチン開発の見通しがついた」と発表しているが、実用化までは時間がかかろう。すると真の敵は情報隠しや病院態勢にあるということになる。患者を早く発見し専用病室に入れ、院内感染を防止するのがSARAに限らず感染症対策の基本だ。真の敵を知れ!というわけである。
 ちなみにWHOがまとめた世界のSARS患者数は8098人、死者は774人。
  
 
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