待合室
2003年10月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★薬の効かぬHIV拡大 先進国で唯一、エイズウイルス感染者が増えているなかにあって、発症を抑えるための薬が効かないエイズウイルスが国内でも広がっているという。エイズウイルスを完全消滅させることはできないが、ウイルスの増殖を抑えることで発症を遅らせることはできる。日本では現在3、4種類の抗ウイルス薬を同時にのむ多剤併用療法が治療の主流だったが、この薬が効かないとなったらどう対応するのか。それも耐性ウイルスは増えているという報告もあるのだから…。心配は尽きないのである。
 
 ★またもやSARS心配 シンガポール政府は9月上旬に27歳の青年をサーズ感染者と認定した。どうもこの青年、環境衛生研究所の実験室を訪れ、そこで培養されていたサーズウイルスに感染したようなのである。一方、アメリカの国際情報会議(NIC)は秋とともに再びサーズが流行するおそれがあるとの警告を発した。インフルエンザの流行と重なった場合はサーズの疑いのある患者を見分け、隔離するのは非常に難しくなるのだ。世界保健機関(WHO)もサーズ対策に心配は尽きないのである。
 
 ★感染症対策に国際協力 日本はいま世界100か国以上で感染症対策を支援している。この春から青年海外協力隊に「エイズ対策隊員」が新設された。サーズ封じ込めに尽力したWHO西太平洋地域事務局長に尾身茂さんが満場一致で再選された。このように、日本の国際的な活躍が期待されているのは明らかで、それだけにオールジャパンとして国際的に通用する人材育成が求められてもいる。若者はすすんで現場経験をつみ、積極的に世界へ出て行くべきだ。遠回りのようだが、日本の感染症対策の原点はここにある。
  
 ★救急率アップの切り札 急病や事故にあった時、病院にたどり着くまでの貴重な時間を有効に活用しようとするのは当然。現状では医師と救急隊との連携は主としてケイタイや無線の音声だけだ。そこに切り札として登場するのが、救急車から患者の様子を高精細画像で送る新しいシステムの開発である。これがうまく運用されれば救急士は医師の助言を受けられるだけでなく、患者や家族も医師に診てもらっているという安心感が持てるというものである。救急の原点はここにある。 
 ★医学教育に現場主義を 救急といえば、日本の国公私立の医科大学80校のうち、救急医学の講座をもって、救急医学専任の教授がいる大学は約半数でしかない。日野原重明・聖路加国際病院理事長は「機敏で適切な処置を求められる救急医学の現場が最適の教育現場であることは分かりきっている」と、30年も前から文部科学省に進言を続けてきた。しかし残念ながらこれが一向に改善されていないのが現状である。日野原氏はこうも言う。「講堂での講義で臨床医学が学べるという考えは、もはや時代遅れである」。医学教育の原点はここにある。
 
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