待合室
2003年5月25日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★サーズの恐怖 サーズ・SARS(重症急性呼吸器症候群)の恐怖は全世界に広がっている。日本も逸早く「新感染症」と認定した。措置としてペストやエボラ出血熱などと同じ危険レベルにあるということ。しかしワクチンも効かず特効薬もなく、確定的な予防法もないこの病気は血液や便に触れなければ感染を防げるエボラ出血熱よりも怖い病気といえそうだ。
 こうした恐怖感はこんな騒動にもつながった。4月17日、フランスの新幹線・TGVでの話。マスク姿の人が乗ってきた。フランスではマスクをする習慣がないので、不審に思った車掌が質問すると、乗客は「ハノイに滞在していた」と答えた。<サーズ患者ではないか!> たちまち列車はパニックにおちいり、臨時停車するは、救急隊員が駆けつけるは…。過剰反応とはかたずけられない恐怖がサーズにはあるのだ。
 
 ★サーズを隠蔽 世界初のサーズ感染者は中国・広東省で発見された。ところが、広東省がサーズを発表したのは発生して3ヶ月後であった。当局は中国発生源説を否定したり、世界が必死になって対策を講じているさ中に早々と安全宣言を出したりして、疑惑を募らせるばかりであった。今となっては情報公開の遅れが世界への感染拡大につながった事を誰も否定することは出来ない。
 国家の体面に引きずられた実態隠しという姑息な手段をとった国の責任は重大だ。北京市長や衛生相の更迭ですまされるものではないのは確かだ。今、ようやく中国は総力をあげてサーズに取り組んでいる。初期にこのような対策がとられていたら…と悔やまれてならない。
 
 ★サーズの教訓 アジアを中心に猛威を振るうサーズをほぼ完封している国がある。ベトナムである。ベトナムに初めて感染者が出た時、政府は躊躇することなくインターネットで死亡した感染者をすべて公開するとともに、北部の中国国境に完全装備した医療・検疫チームを急派して、感染源の流入を厳しく監視した。これだけ果敢に感染症対策の出来たベトナムの「危機管理」はみごとだった。5人の死者を出しながら4月中旬以降は感染封じ込めに成功したのである。これを大国である中国は謙虚に見習うべきであり、先進国といわれる日本もまた心を開いて学ばねばならない。
  
 ★こんな大国はご免 先進国とか大国とか書いているうちに、日本は今も「先進」主要国の中で一番のたばこ「大国」であることを思い出した。先月の本欄に、7月のたばこ増税を機に禁煙のすすめ、といったことを書いた。そのあと、こんなアンケート調査資料(厚労省)をみつけた。「1箱250〜300円のたばこをニューヨーク州並に1箱1000円にしたら喫煙者の6割はやめる」というのだ。そういえば、日本は現在、先進国の中でたばこの値段が最も安い国なのである。
 
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