待合室
2003年2月25日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★クローン・デモ 今月もまたクローン人間の話題をとりあげることになる。1月19日の日曜日、東京・渋谷で日本でのクローン人間誕生祝賀パレードがテレビに映し出された。異様な光景だった。それから数日して、あの世界で初めてクローン人間を誕生させたと主張する新興宗教団体の関連会社であるエイド社が「代理母が日本で出産」つまり「日本人のクローン人間が生まれた」と発表したのである。
 エイド社は20万j(約2400万円)でクローン人間造りを引き受け、現在100人ほど契約を済ませているという。ちなみに、この宗教団体には世界で日本人が一番多く参加しているそうだ。寒々としてくるものがある。
 
 ★ダイエット・ブーム アメリカでの小型飛行機の話。搭乗定員を守ったが、肥満の人が多かったため、結果的に重量オーバーとなりフライトがスムーズにいかなかった。こんな笑えない小話がニュースになるご時世の中で、若い女性たちの間でダイエットがブームである。ダイエット番組は視聴率がとれるのであろう。どのチャンネルを回してもダイエット番組は花盛り。肥満予防は健康維持に欠かせないという事、肥満が発症に関わると考えられる病気には心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、虚血性心疾患などなどがあるという事から、肥満をけっして過小評価することはできない。その点から言ってブームは結構なことなのか?どっこいそうはいかないのである。
 専門家も指摘するように、肥満者のダイエットは栄養、運動、ストレスマネジメントなどを適切に組み合わせた綜合的プログラムに基づいて、管理された環境の中で継続実施するものであろう。つまり、生活習慣病の視点に立ってダイエットをとらえていかないと、単におしゃれのひとつの手段という時の流れに溺れてしまう危険がある。無理なダイエットによる健康障害の被害などその最たるものだ。そこには「生活習慣病としての肥満」という最も肝心な視点の欠落がある。そんなダイエット・ブームは寒々とした風景にしか映らないものだ。
 
 ★ブラックジャック 劇画構成の医療ドラマ「ブラックジャックによろしく」(佐藤秀峰、 長屋憲監修)がいま大ブレーク。単行本にまとめられた初版が85万部を即日完売し、第4巻までで410万部を突破しているというから驚く。 
 「医者ってなんだ」という根源的な問いかけを繰り返しながら、医療の行き詰まりを徹底して取材し、大学病院の現状に苦悩する研修医を主人公に物語を描いてゆく。そこから見えてくるものは医療の世界の厳しい現実である。
 昨年の医療機関倒産は史上最悪の47件。原因は単に経営面だけではなく、問題の根は深い。制度、財政、倫理などなど、あらゆる面において医療の現場が危機に瀕しているのである。いや、もう破綻しているといったほうがいいくらいだ。その光景もまた寒々としているというものだ。
  
 
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