待合室
2002年12月25日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★安楽死に強烈な一石 先にイギリスの高等法院が全身マヒの患者の主張する「死ぬ権利」を認める判決を出したことをとり上げた。その時、安楽死と尊厳死は基本的に異なることを書いたが、それにはここでは触れないが、今回はオランダであったホントの話。
 なんと、看護婦が患者13人を殺害したという極めてショッキングな事件だ。週刊新潮の報ずるところによると(11月7日)、犯人は患者に致死量のモルヒネやカリウムなどの薬物を注射して殺害。この看護婦、死に憑かれ偏執した女性であったという。
 オランダは世界で初めて安楽死が合法化され、その法律が施行されたのは今年4月。この法律は20年以上の歳月をかけて議論され、厳しい仕組みが整えられたはずだった。だが、極めて残念なことに、病院の管理体制がズサンなら、今回のような事件はこれからも起きるであろう、と報じられていることだ。背筋が寒くなる事件!
 
 ★小児救急の整備は遅々として これもまた、このまま放置されるなら背筋が寒くなるというものである。朝日新聞の調査によると(11月9日)、複数の小児科医がいる国立病院と国立療養所が、小児科の輪番制などの態勢に25%しか参加していないというのだ。ごうを煮やしたように厚労省は国立病院に小児救急を重点医療にするための態勢整備を促してはいるが、今のところ地域医療の中核である国立施設でさえ過半数が協力しない実態が浮かび上がってくる。どうする!
 
 ★旧態「医」然の医師会 緊急を要するはずなのに極めてお粗末な小児救急問題などに馬耳東風といった感じの日本医師会。その医師会の政治団体である日本医師連盟の都道府県の4分の1が一党支持を止めるよう要請したという。その際、「社会の変化から日医のみが取り残されている」と、体質改善を求めるまっとうな意見が相次ぎ、旧態依然とした活動を脱却しようとする動きは各地で活発になってきた。だが、当の日医はそんな声にも馬耳東風。古い体質が直ちに変わる保証はない。これにつける特効薬はないものか!
  
 ★専門以外はわからないって?! 残念ながら「わからない」というのが現実なのだ。医学部では物質的な理科系の医学だけしか教わらない。「癒しの実学である看護学も学ばないで、患者の痛みがわかる医師に育ちなさい、といっても無理である」と心ある医師は指摘する。そこで遅まきながら厚労省は国家試験に合格した医師にそのあと2年の研修を義務づけることになった。
 期間中はアルバイトを禁じ、研修に専念できる手当てを出すと共に複数の科で研修させるというもの。もちろん大学病院などの医局ごとのたて割り意識が強いことが大きく災いしているのは明白だ。  
 しかしここで言いたいのは、患者の気持ちを思いやる習慣をつけるのが、なによりも大事な研修項目であることを指導者も研修を受けるひとも忘れないで欲しい。意識改革を!
 
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