待合室
2002年10月25日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★構造改革せよ 読んでイライラする記事(9月15日付け朝日新聞夕刊「窓」欄)に出会った。「昼待ち草」と題されたこの記事を書いた記者は大學病院に定期的に通院している。その日、午前9時30分に番号札をもらって待つ。午後1時45分に、ついにしびれを切らせてしまい、看護師さんに聞くと「午後診療の5番目です」と言われたという。
 抑制された文章であっただけに、この大學病院の診てやろうといったお上意識からくる横柄さがはっきりとみえてきてイライラしてしまうのだ。時代の流れに平気で逆行する感覚はとても許せない。一度でも患者の立場を考えたことがあったろうか、と疑わざるを得ない。こんな病院には構造改革の大ナタが必要だ。
 
 ★こちら待たせません 気候の変わり目に風邪をひいてしまった。咳き込みが激しく街の医院に出かけた。混んでいた。顔が曇った。と、看護師さんが「これでお呼びしますから、外で用事をなさっていても結構ですよ」と渡されたのが、なんと昔懐かし「ポケベル」(ペイジャー)だった。早速私は近くの喫茶店で新聞を読んだり、友人に電話をしたりして私用をこなしていた。ポケベルが鳴った。待ち時間もなく受診することが出来た。こんなシステムが普及するであろうことは知識としては知っていたが初体験だった。小規模医院だからできるのだ、などとは言わせたくない。
 これは廃(すた)れたと思われたものが、病院経営に再び脚光を浴びてきた好例だが、もう一例。医療現場では「携帯電話と比較して医用電気機器への影響が小さい」という理由からPHSの導入が進んでいるという。たとえば、ナースコールシステムと連動させることによってPHS端末の画面に情報を表示させ、コールを受けたら素早く応答できるシステムが実用化されている。
 
 ★イライラもピーク 9月上旬の事である。岩手県一関市でいたましい事件が起こった。生後8か月の男児が急病になり、救急指定病院に駆け込んだ。だが、どの病院も救急当直に小児科医が不在という理由で診察を断わられ、ついに命を落してしまったのである。「助けてください」と叫ぶ両親の心中はいかばかりであったろうか。
 当直だったのは整形外科医や眼科医だった。赤ん坊の急患は敬遠されるのであろうか。それとも手も足も出なかったのか。眼科医は小児科医にポケベルを鳴らしたが相手はポケベルをカバンに入れていたので気づかなかったという。ここでもポケベルの登場だが、何の役にも立たなかったのは残念至極である。
 この悲劇の根底には、人間の体を把握するまえに、あまりにも専門化・細分化された医師養成教育の欠陥もあるだろうが、そもそも小児科医は労多くして儲けが少ないのであろう。小児専門医の数は全国で1万4千人。頭打ちだという。医師も人の子。そうした状況にあるならば、せめて小児救急体制はいますぐにでも整えてほしい。医療の構造改革はここでも緊急事である。

                            
 
 
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