待合室
2002年8月25日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★またまた禁煙の話 女性下着メーカーのトリンプが禁煙宣言した社員に3万円の報償金を支給している。ただし宣言者がタバコを吸えば報奨金を倍返しするというもの。アメとムチである。
 一方で中学生たちの喫煙を未然に防ごうと厚労省は教材用のCDーROMを開発した。学校に普及しているパソコンを禁煙教育でも効果的に使ってもらうのが狙いだという。クリックして禁煙学習。
 
 ★アメならぬガム 禁煙すると体内のニコチン濃度が下がり、イライラ感などがあらわれるが、禁煙ガムを噛めば体内にニコチンを補い、このつらい症状を軽くするという。
 どのような分野でもそうだが、戦争が人間の欲望をみたしていく。第二次世界大戦でインスタント・コーヒーが考案されたように禁煙ガムもうまれた。潜水艦乗組み員がタバコを吸えず苦しんでいたのがキッカケ。
 ガム、アメ、ムチ、そして学習……。いじましい――と思っているのかどうか、喫煙者の中でタバコを止めようとしない男が75%、女は65%であるという統計がある。
 
 ★クスリはリスク 中国製の「やせ薬」で679人もの被害者が出た(8月8日現在・厚労省調べ)。その実態は薬の副作用である。一般に考えられている以上に薬の副作用は多い。クスリを逆に読めばリスク。やせたい一心で「やせ薬」にだけ頼って飲み続ければ副作用のリスクは高くなるのは当然だ。
 それに関連するが、日本の服薬の多いのにはびっくりさせられるという声は大きい。例えばアメリカでは特別な場合を除いて、できるだけ3剤までに抑えるが、日本では5〜6剤もめずらしくないという。飲み併せると薬同士が相互作用する。ここでまたタバコだが、その場合「心臓血管系に働くタバコ」も要注意という指摘がある。前項のタバコをやめたいとおもわない男75%、女65%の人たち、いかがですか?
 
 ★さ迷う医の匠 日本の伝統が匠(たくみ)の強靭な精神構造と秀抜な技をはぐくんできた。前回、東京女子医大事件にふれた時、「職人の技」の衰退をおしんだ。修練してきた職人的な医師が消えていくのをおしんだ。医の匠を期待したからである。しかし匠をはぐくむ環境など、とうになくなってしまったのだ。
 ここで厳しい指摘を。「一つの医局の流儀が伝統工芸のように引き継がれるだけで進歩が遅れている」(桑間雄一郎医師「裸のお医者さまたち」)。'白い巨塔'での医局講座制が相変わらず温存されている組織への警鐘だ。こんな状況の中では、よい医師は育たず、ひいては日本全体の医療の質も向上しないのはいうまでもない。悪しき組織が匠の芽を次々に摘んでゆく現状が人々の目にさらされている。東京女子医大事件をそうした観点からとらえておきたい。
 
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