2014年3月15日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★大震災から3年、被災地に桜花繚乱の気配
   

 先月は「雑魚寝(ざこね)の老後」を取り上げたが、今月は視点を少し変えて「特養(特別養護老人ホーム)」の厳しい現実に目を 向けたい。ホームに入りたい人たちの待機の実態には目を覆うばかりのものがあるのだ。高齢者が孤立化し、貧富の差があり、待機者が多い という3点が、都会がかかえる高齢者問題の特徴となっている。申し込んでも返信は「27番目でした」といった始末なのだ。こうして特養 に入れない人は2010年度、じつに4万3千人にも達しているのである。特にこの3月に3年目を迎えた東日本大震災の傷跡は特養問題と しても心に深く刻み込まれているのである。
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 こうした東日本の状況にBS朝日の報道番組「いま日本は」のキャスター、中村雅俊が三陸鉄道(三鉄、本社・岩手県宮古市)に乗って自身の故郷でもある東北 の“今”(2014年3月)を見つめなおしている。「被災地を忘れない」「忘れさせてはならない」…と、そんな気持ちを胸に、復興に取り組む人々と触れ合う 旅に出た。そこには日々復興のために働く人、亡くなった家族を思いながら懸命に生きる人…東北ならではの働く人々の喜びと苦悩の出会いがあったであろう。 被災地の人々が雄々しく立ち上がろうとしているのを「桜」という「絆」でつなぐ三陸早春の旅にこそ心を解きはなつものとなろう。きらめく海に伴走されるよう に三陸の陸地を行く三陸鉄道が、折しもこの4月に「北リアス線」「南リアス線」ともに全線開通となる。こうした“応援”を得て、中村雅俊キャスターの三陸早春 の旅は記録されていく。
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 一方、桜を求めての旅の始まりは三陸と別れて弘前城からである。公園には約2600本の桜が咲き誇る。このあと、雪に覆われた岩手山をバックに広大な 小岩井農場(岩手県)の、見事な1本桜に出会う。それぞれにその土地ならではの歴史があるように、ここ小岩井にも、あの陸前高田の「奇跡の1本松」のように、 土地の人々の熱い願いを込めて育てられている。「頑張れ1本松の赤ちゃん」であり、「ありがとう小岩井の1本桜」だ。
 さて、1本桜と別れて、三春町(福島県田村郡)に入る。そこには雄大な枝を広げる「三春滝桜」が南北20メートル、東西25メートルに広がる。日本三大桜に かぞえられている。まるで、薄紅色の滝が流れ落ちるような姿は驚異の生命力を秘め、まるで羽衣をひろげた天女のようだ。
 ここから、会津盆地(福島県)へとはいって行く。真っ先に目を奪われるのは会津線の駅舎の一つである湯の上温泉駅。見事な茅葺き屋根が“絶品”だ。ここから 会津若松にUターンする。幕末のジャンヌ・ダルクといわれる新島八重ゆかりの鶴ヶ城公園。白亜の名城だ。この城を最後に桜ロードでの出会いは終わる。
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 ペンを擱いたからとて、時を止まったままにしておくことはできない。ここに1枚の写真がある。原発事故で全町民が避難を続ける双葉町(福島県)の役所に、 事故後はじめて報道のカメラがはいった。その写真である。大震災の翌日、国の指示で避難して以来無人になったままだ。ここでは時が完全に止まっている痛烈な 情景…。役場の屋上からは、「時が止まったまま人の住む世界からへだてられ、朽ちていく町の姿があった」という。
 これでいいのか!救われるのは南相馬市(福島県)の中高生中心の合唱団が震災のつらい体験を歌にこめ、ウイーンでベートーベンの「第九」を歌ったという。
 メンバーの1人、高校1年の少女は父が東電の社員。避難先で住民から「大熊(少女の故郷)へ帰れ!」と言われ心が折れたこともあったという。が、少女は 「暗闇の中にいた私を合唱は救ってくれた」と。そして合唱団の指導者は言う。「震災はこの子たちを大きく変えた。こんなにも感情表現が豊かになった子どもたち を私は知らない」と。
 これはうれしい。桜花にのって響いてくる少女たちの歌声は「特養」に入れずに苦悩する高齢者にも、どれほど温かい慰めの歌声となったことであろうか。想像 するにあまりある。わたしたちは被災地を忘れない、忘れてはいけないのだ。

 
 
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