2013年4月15日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★大きな勇気と希望をガーベラの花にこめて
   

 若い人たちが、果敢に挑戦するセンバツ球児の姿に接すると、今年もまた新しい季節が開けてゆくのに、胸をうたれる。
 思えば、東日本大震災の一昨年、センバツで選手宣誓をした創志学園(岡山)の野山主将は「がんばろう日本。生かされている いのちに感謝…」と呼びかけ、昨年は被災地から出場した石巻工業(宮城)の阿部主将が「…見せましょう日本の底力、絆を」と宣誓した。 そして今春、鳴門(徳島)の河野主将は「全国の困難と試練に立ち向かっている人たちに大きな勇気と希望の花を咲かせる」ことを誓った。 力強い宣誓のリレーだった。
 そして今年のセレモニーを彩る行進曲に採用されたのは、大震災の支援ソング「花は咲く」(岩井俊二・作詞、管野よう子・作曲)であった。
 NHKの紅白歌合戦でガーベラの花一輪づつを手に被災地出身の人たちが祈るように歌ったのは感動的なシーンであった。そして、あたかもその感動と祈りをさら に彩るような出来事があった。それは「被災統合 絆の校歌」と報道された宮城県東松島市内の統合された小学校の校歌誕生のエピソードだ。同県女川(おながわ) 町出身の俳優・中村雅俊さんがこの学校の新しい校歌をつくり、児童たちの前で披露したのであった。児童たちは「あすへ咲かせる花になろう」と元気いっぱい 歌った。
 私たちは今まさに、希望と励ましの歌を手にしたのだが、もうひとつの素晴らしい花を手にしようとしている出来事を紹介したい。
 それは日本がどうしてものりこえられずにいる看護師や介護福祉士など「ケア人材」の分野での深刻な人手不足の問題だ。こうした絶対的な人手不足によって 生まれた「医療難民」の悲劇の実態は繰り返し報道されてくる重苦しい現実である。
 これに手をこまねいていても、問題は何の解決にもならない。看護師の卵の受け皿が続々開設されているのは事実だ。たとえば、横浜市を中核に神奈川県の 施策では、昨春は横浜創英大学、今春は関東学院大学、来春は専門学校4校…と受け皿が続々整備され独自のカリキュラムを組んで対処しようとしている。そして 外国からの人材にも大いに力になってもらいたいと、呼びかけている。
だが、残念ながら、現在のところ、東南アジアからの看護師受け入れはあまりうまく進んでおらず、育成の仕方の見直しも必要とされているという。

 そんな時、医療過疎地である岩手県一戸(いちのへ)町で、医師を志すベトナムの女性と、それを迎え入れる町の挑戦が注目されている。
 稲葉・一戸町長は「日本の医学生がこんな小さな町に来てくれるはずがない」というならリスクを覚悟のうえで医学生奨学金制度を活用しての嘱託医養成に 乗り出そうではないかと立ち上がったのである。
 これに応じたのがベトナムの19歳の女性だった。彼女は昨年5月、ベトナムで最難関のホーチンミン市国家大学付属英才高校を卒業、これから2年間、専門学校で 日本語を学び、その後、大学医学部に進学する。町は、医師免許を取得したら、町の嘱託医として県立一戸病院に勤務してもらう計画だ。
 日本とベトナムとの関係は、安部首相が就任後初の外遊としてベトナムを訪問、「戦略的パートナーシップ」という言葉で両国の関係強化の重要性を強調する。
 「ケア人材」不足が深刻化してからあわてて手を打っても遅すぎる。ぜひ「鎖国」の扉を弾みをつけて開けたい。時あたかも今年は両国の外交樹立40周年でも ある。その花の見事なリレーを実現したいものである。  「花は、花は、 花は咲く〜」。

 
 
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