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今回は医療の医の字も出てこないものになった。いきなり映画の話である。
いま評判の映画を紹介したい。10月29日に全国公開された「がんばっぺ フラガール!」(監督・小林正樹)。東日本大震災で休業を余儀なくされた福島県
いわき市の「スパリゾートハワイアンズ」が10月1日に部分開業にこぎつけるまでを追った感動のドキュメンタリー映画だ。
おもえば、いわきは日本のエネルギー政策に翻弄されてきた町だった。46年前、エネルギーの主役が石炭から石油に代わり、疲弊してしまった炭鉱の町から
力強く立ち上がる柱となったのが、1966年にうまれたスパリゾート「常磐ハワイアンセンター」(現「スパリゾートハワイアンズ」)だった。寒冷の地に作り
上げたこの巨大な楽園が地元のピンチを救ったのである。
06年に作られた映画「フラガール」(監督・李相日)はそうした廃れる一方の町・いわきを再生させたのは炭鉱の娘たちだった…というフラガール誕生の秘話を
描いた作品だった。
この「フラガール」で描かれたエピソードから45年。いわき市は再び危機に直面、それもかつての比ではなく、施設は壊滅的な打撃をうけていた。しかし
フラガール達はくじけなかった。「楽園」をもう一度作ろうと立ち上がったのである。
自らが津波で家を流されたりした被災者でありながら弱音を吐くこともなく、人々に笑顔を届ける「フラガール全国きずなキャンペーン」に馳せ参じたの
だった。彼女たちのこうした小さな一歩は、しかし大きかった。
地震、津波、原発事故、そして風評被害の四重苦を受け、混迷の中に突き落とされながら、まさに怒涛の中で生きねばならない真っ只中にあって、フラガール
たちは困苦の道をみずから選んだのである。
「みんな笑顔を届ける仕事から逃げないでいこう」と約5か月、125か所におよぶキャラバンを展開した。駅前広場で、夏祭りの急造仮設舞台で、避難所で、
一生懸命に踊り、笑顔をまいた。そうしたフラガールたちのいまが今度改めて映画になったのである。
7月に撮影を始め、10月1日の舞台をクライマックスにクランクアップした。フラガール達の感動の200日の軌跡は鮮やかに記録され、キャラバンが運んだ笑顔の
絆は映像に見事な結実をみせた。
原発の怖さは放射能だけではない。ひとつの原発建設は、その他の選択肢をすべて圧殺してしまう。巨大な資本が投入され、巨大権力集中型のエネルギー社会を
生み出してゆく。この陰鬱極まりない社会の中で、フラガール達のあの笑顔はまさに値千金といわねばならない。こうした共感を得ながら、逆境をはねのける
エネルギーは同じ福島県の、これは会津・猪苗代スキー場でも展開されていた。冬のシーズンを前に6カ所のスキー場が合同主催する「ゲレンデ逆走マラソン」
である。山裾から駆け上り、山頂で折り返して駆け下りてくる競技だ。風評被害を嘆いてばかりいても仕方がない。逆境をはねのける“逆走マラソン“という
発想の遊び心がいい。この意気込みで、冬のシーズンに向かってほしい。早くも寒波到来でゲレンデ作りが本格化といった状況になってきた。
そして正月になると、今度は箱根駅伝がやってくる。“山の神”と賞賛される東洋大・柏原選手は4度目の激走をみせてくれるだろう。その柏原選手もまた
福島・いわき(県立いわき総合高校出身)の好青年である。
逆境をはね除ける福島の若者たちが逆走し、激走し、そして笑顔で踊る心意気にエールを送りたい。
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