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カンボジアに同国初の日本製・救命救急センターが来春にもお目見えするという。これは北原国際病院(東京都)がかねて
現地病院で救急医療やリハビリを実施しているが、その展開のなかから立案されてきたものだ。
医師が自ら出て行くことで、高度な機器を使った検査や治療を浸透させる。こうして医療機器輸出が増えるほか、医療技術の高さをアピールすることが出来、
医療産業の新たなステップがみえてくるのである。
こうした状況は急に生まれたものではなく、医療と医療機器をセットで提供し、日本医療の評価を高め、医療ツーリストという新たな産業と表裏一体となって
発展していこうという目算が熟成してきた結果でもあつた。
これはまさに医療新興国(ロシア、中国、ベトナム、カンボジア)に対する医療の国際化事業である。民間病院から日本人医師や看護師を派遣し、医療機器は
テルモや東芝メデカルシステム、パナソニックなど国内メーカーが提供し、日本と変わらぬ治療が受けられる仕組みを提供するのだ。パナソニックは3次元表示の
内視鏡、外科手術用モニターをこの12月に発売、細かい作業が要求される泌尿器科や耳鼻咽喉科での利用が見込まれているという。
ただこうした医療の国際化は「国内での公的医療保険制度を脅かし、地域医療を妨げる恐れがある」と日本医師会は批判的な意見を提示しているのを、無視する
わけにはいかないのは勿論であろう。
こうした条件を検討・克服することを前提に政府の新成長戦略では医療・介護を「新たなサービス成長産業」と掲げ、病院輸出や医療観光の経済効果を、
2020年に1兆円、雇用創出を5万人と見込んでいるという。
ここで、忘れてならないのは、こうした輸出を円滑に展開するための潤滑油の役を担ってくれるのが「ケア人材」であるということだ。特に経済連携協定
(EPA)に基づき来日する東南アジア各国の看護師、介護福祉士候補のエネルギーは国内の「人材不足」を補完するだけではないのである。
先日、インドネシアのEPA看護士候補のうち滞在を1年延長されたのは僅か27人だけであると報じられた。失意の帰国者に対して無策であってもいいのか?
現場の疲弊と苛立ち解消に手を差し延べるべきであろう。
以上は国外マーケットを視野に入れた病院輸出のケースだが、国内産業に目を向ければ、特に東日本大震災の復興特区構想の一つとして、東北を医療機器産業の
一大拠点にする計画がもちあがっている。
それはこうだ。東北大学病院を「医工連携中核病院」として、財政援助をしながら同大学の医学部と工学部の連携を強化し、国際水準の臨床研究の実現を
はかる。一方で民間技術者も受け入れ、医療現場の視点から手術用ロボットの開発を進め、放射線治療の装置や内視鏡手術器具などの開発にも力をいれる。
東北地方にあるオリンパスや二プロなど医療機器メーカーの主力工場との交流も後押しをしてゆく計画である。
東北大学を中核としながら、ほかに拠点として、岩手県では岩手医大病院と岩手大学工学部との連携・交流を、福島県では福島県立医大病院と、県内にある
日大工学部との連携・交流をしてゆくといった復興特区構想が広がってゆく。
これらもまた、「医療産業」の新たなステップとして期待されるであろう。
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