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「高度人材」という言葉がある。専門的な知識や技術を持つ外国人労働者の総称で、政府が使っている用語である。それによると、
「医療」「技術」「人文知識・国際業務」など8種類の在留資格を設定しているが、なかでも注目されているのが「医療」だ。
看護や介護といったいわゆる「ケア人材」の分野ほど人手不足の分野はない。医師や看護師の絶対的不足によってうまれる「医療難民」の悲劇の実態は東日本
大震災が繰り返しつたえてくるところである。
地震で破壊され、津波に流され、そして原発事故による凶々しい放射能汚染…避難騒動のなかで、踏みとどまる病院が注目をひいた。車いすや人の力にすがる
高齢者たちが震災弱者となってゆくのを見捨てるわけにはゆかないのである。
しかしそれにしても、ある病院の院長が悲痛な声で「人手がたりない。資格などなくてもいい。とにもかくにも人手が欲しい!」と訴えていた。この叫びは
心の底に落ちてくる。人手がなければ高齢者は生き延びられないのである。こうした未曾有の国難の中で私たちは何としても老若共生の社会構築を実現しなければ
ならないのだ。
その原動力こそ人手そのものだ。赤十字の運動月間PRのキャッチコピーに「人間を救うのは、人間だ」というのがあった。まったくその通りである。
大学の医学部は79年に琉球大学に新設されたのを最後に、30年以上も新設されることがなかった。その医学部をつくる動きがこのところ、全国各地にあるという。
厚労省調査(2010年)によれば全国の病院の求人に対して医師数は18000人足りないという背景が、そこにはある。
ところが、それ以上なのが看護職だ。なんと、2025年には最大20万人が不足するというのだ。これほど看護師の労働実態は厳しい。日本看護協会によると、
病院で働きはじめた新人看護職の9%が1年以内に職場を去っていくという。
こうした「ケア人材」の不足は日本だけでなく、欧米でも同じで、看護師獲得にむけて英、カナダ、ドイツ、それに韓国などで人材獲得競争がすでに起こって
いる。
それなのに日本では「平成鎖国」などと揶揄される始末。いうなれば“漢字鎖国”が依然として“開国(改善)”されていないのだ。前にも指摘したが、
「胃瘻(いろう)」や「褥瘡(じょくそう)」といった漢字が大きな壁となっている。日本人でもこうした漢字を自在にこなす人は少ないであろう。それほど
外国人には難関なのだ。
日本との経済連携協定(EPA)で来日する志のある人たちが国家試験でまるで「待った!」をかけるように立ちはだかっているもののひとつは、こうした
漢字の壁だ。
政府は昨年6月の新成長戦略で、高度人材にあたる登録者数を09年末現在の15万8千人を20年までに30万人程度に倍増させる計画を掲げている。が、日本は単純
労働者を含めて外国人受け入れに前向きでないとのイメージがあるのも確かなのだ。
政府が受け入れを優遇するのは「医療・介護」や「情報通信」など専門性を持つ外国人が対象となる。学歴や年収、母国での職務経験などのほか、日本語の能力
なども重視。こうしたものに一定以上の点数をとれば、政府はその人を「高度人材」と位置付ける、というのだ。
こうして、人口減を踏まえて専門知識などを持つ人材を日本に呼び込み、国際競争力の底上げを図ることをめざしている。菅首相は「平成の開国」をうたうが
「ケア人材」についても開国への道を拓く改革をぜひ進めてもらいたいものである。
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