|
2010年(平成22年)を送り、心も新たに2011年を迎える。思えば2010年は5月31日に禁煙デー、次いで10月
1日にたばこ値上げという2本柱が卒煙の潮流を作り出し、その流れを強める中から新年を迎えることになった。
5月の禁煙デーにあわせて、社内を全面禁煙にする会社(たとえば「ゴールドウイン」など)も登場したが、すでに早くも2月には、公共空間での全面禁煙を
促す厚労省の「局長通達」が出された。だがそれは罰則のないゆるいものであり、4月施行の「受動喫煙防止条例」も「職場」は対象外とこれまたゆるいもので
あった。
さらに厚労省はたばこが値上げされて1ヶ月経った11月に公聴会を開いた。テーマは受動喫煙対策の法的義務付けをめぐってであった。先月の本欄で
「受動喫煙」は曲者(くせもの)であると指摘したが、公聴会でも曲者ぶりがいかんなく発揮された。
席上、メールで受動喫煙被害の相談を受けている弁護士が規則に実効性を持たせるためには「法改正では罰則が必須だ」と強く訴えたが、愛煙家側は「大切な
のは喫煙者と非喫煙者の共存である」との主張が述べられ、ヤジが飛び交うほど双方の意見と主張は平行線を辿り、相容れないものとなった。
厚労省は通常国会に「労働安全衛生法」の改正法案提出をめざすというが、たばこ値上げによる税収(9月売上げ実績)は駆け込み需要で前年比2倍の
1488億円だった。「禁煙=健康」の看板を掲げる厚労省といえどもこの税収の魅力に揺れるのではないか。
そんな心もとないなかで、企業はゆっくりながら、卒煙に走り始めた。たとえば、「エスエムジー」は新卒採用を原則としてたばこを吸わない人に限り、
「住商情報システム」は禁煙達成者に福利厚生サービスに使える“ポイント”を支給、「オリックス」はこの4月から就業時間中のオフィスを全面禁止とし、
「ネスレ日本」は禁煙外来の自己負担分を会社と健保組合が支払うという支援策を導入している。
一方、スーパーの医薬品コーナーには「禁煙サポート」の看板が目立ち、禁煙グッズの売行き好調をしめしている。ガムは5〜10%伸び、禁煙パイポは3倍、
禁煙補助薬は売れすぎて出荷を制限し、ニコチンパッチは約3倍売れて品薄状態が続き、禁煙アメも約3倍の伸び(いずれも10月前年比)となっているという。
これらの数字は禁煙への動きをあざやかに反映している。神奈川県で発足した「卒煙塾」(先月紹介)などそうした動きの典型であったろう。
アメリカに目をむけると、年間約44万人が喫煙が原因で死亡しており、未成年者の喫煙も問題になっている。米厚生省は子どもや一般大衆を護るため、
瀕死の病人や死体などの過激なイラストや写真、「たばこであなたは死ぬ可能性がある」といった文言をたばこの箱や広告に表示するよう義務づける新しい規制案
を発表、2012年から実施するという。
こうした上からの禁止策に比べ、卒煙塾は下からの動きである。たとえば、「東京海上日動火災保険」では喫煙者同士が2人1組、励まし合いながら卒煙に
挑む。これを「ニコチンハイダー」と名付けている。10月のたばこ値上げをきっかけにペアを組む人たちも現れたようで、
30〜40%が卒煙しているという。これは卒煙塾企業版の典型ともいえよう。
仕事仲間から自発的なファイターが次々に出てくる。こうした人たちは“規制法”などあっという間に追い抜いて、禁煙へ向かって走る卒煙ランナーとなって
いくのである。
さあ、あなたも卒煙ランナーになりませんか?
|