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先月の本欄で、「1日1万歩」の健康ドラマを楽しもうと紹介したのに、その舌の根の乾かないうちに、「1日1万5000歩」
以上という数字を掲げる羽目(はめ)になってしまった。
都の教育委員会が都内の小・中・高校生の体力向上策として、子どもは「1日1万5000歩以上」歩こうという目標を決めた。(7月22日報道)という
のだ。
文科省が昨年度実施した「全国体力調査」で東京の小学5年生は47都道府県の中で30位台、中学2年生は40位台だった。都教委はこの数字に危機感を
強めた。早速、都教委は子どもの体力を向上するための推進計画をつくり、その中に「歩数」の目標も盛り込んだ。それが「子どもは1日1万5000歩以上」
だった。将来はこの目標の歩数を増やし、2年後の2012年度までには体力の数値を全国平均並にしたいというのだ。
都会の子どもたちは東京だけでなく、めっきり身体を動かさなくなり、例えば小学生の1日の歩数は1979年の全国調査では平均2万7000歩だったのが、
28年後の2007年には1万3000歩に半減してしまったという。
歩数計つきのシニア用ケイタイを持ちながら毎日歩いている“後期高齢者”の筆者はいま1日平均「7000歩〜8000歩」であり、「1万歩」に遠く及ば
ない。
しかし、この数字をみて、「年だなあ〜」と慨嘆しているわけではない。なにしろ、今時のサラリーマンや主婦はせいぜい「1日5000歩」であるという
統計数字があるからだ。
大人が大人なら、子どもも子どもである、ということで、総じて歩かなくなったのである。都教委は目標歩数を「1日1万5000歩以上」を掲げているが、
これは現実的に達成可能な水準なので「目標の歩数を増やすことも検討したい」と意気軒昂だ。先月紹介したが、明治や大正の日本人が、「1日3万歩」を当然の
ように歩いていたのをおもえば、ただ驚いているわかにはいかないのである。
いまや、ゲームの普及などで外遊びが減ったことや、交通機関の発達のなかで子どもたちは歩かなくなった。大人も歩かない。だから学校の往復がちょっと
遠いだけで、親は何の抵抗もなくバス通学をさせてしまう。バスの定期をランドセルにぶら下げた小学生がどっとのりこんでくるのに居合わせる。こんな風景の
中で、筆者は自分の小学生時代の通学風景をふと思い起こす。……田んぼ道を縫い、砂利道を走りぬけ、林の坂道を上がり、一気に下る。途中の小川でメダカの
学校の“授業参観”をたっぷりして、また歩いてゆく。そんなことを思い描くと、「1万5000歩」ぐらいは自然に歩ける歩数なのだ。
健康志向からウオーキングを楽しむ人が多くなってきたのは結構なことだ。そんなことから、シニア向けケイタイには歩数計だけでなく、正しい歩き方を指導
する機能も搭載されるようにもなった。至れり尽くせりである。
さあ、子どもの「1日1万5000歩以上」を突破口に大人も「歩け、歩け」だ。舌の根の乾かないうちに…などと遠慮することはない。まずは「1万歩」を
目指して今日も気楽にでかけよう。
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