2010年7月15日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
このコラムに関するご意見、ご感想をお寄せください。
 
 
 
 ★「1日1万歩」の健康ドラマを楽しもう!
   

 最近がんの原因に関するエビデンス(科学的根拠)の集積が世界的に進んでいるといわれている。そんな中で、アメリカでは がんで死亡した700万人にも及ぶデータを集めて、その原因を分析したという研究成果が注目されているようだ。

 それを9項目にまとめてみると、次のようなものになるという(日経紙・4月25日付)。

 [1] たばこ [2] 野菜果物の摂取不足 [3] 塩分のとりすぎ [4] ウイルス [5] 運動不足 [6] 肥満 [7] アルコール [8] 空気汚染 [9] 医療検査や薬剤の副作用。

 [5] の運動不足は意外な感じもするが、大腸がん、乳がん、子宮がん、肺がんなどが増えているというエビデンスがある。[7] のアルコールも、“百薬の長”が なぜ…と思えるが、飲みすぎは極めてハイリスクなのだという指摘である。

 こうみてくると、原因のほとんどは生活習慣と環境、つまりライフスタイルにあるようだ。その柱となるのが食事と運動であり、運動の中で最も手軽で 親しみやすいのが、ウオーキングである。


 ところで、明治や大正時代の日本人は「1日3万歩」を歩いていたというからビックリする。これに比べ、便利な乗り物がこれでもかと開発された現代を 生きるサラリーマンや主婦はせいぜい「1日5千歩」なそうである。

 3万歩といえば「1歩=50センチ」として1万5千メートル(15キロ)歩いたことになる。これで換算すれば1万歩は7500メートル(7.5キロ`)、5千歩は 3750メートル(3.7キロ)である。せめて健康を保つには「1日1万歩」を歩いてほしいと専門家(吉川敏一・京都府立医科大学大学院教授)は要望する。


 高齢者用(?)の私のケイタイには「歩数計」が付いており、いつもポケットにいれているので、毎日の歩数(いきいき歩数)の履歴が記録・表示されている。 したがって「1日何歩」歩いたかすぐわかるが、その体験からいって「1日1万歩」はかなりきつい。

 持続的にウオーキングを実践するにはある程度頑張らないと成功しないことが、よくわかる。それも、姿勢を正し、リズミカルに緩急をつけて歩くと効果的で あることを念頭におき、長続きさせないと、思うような効果は現れない。

 こうしたウオーキングは生活習慣病の予防やアンチエイジング(抗加齢)には必要不可欠なのである。まさに、継続は力なり。じっくり一歩一歩である。 そこでは、一見威勢のいい瞬発力をひけらかすのとは大違いの健康ドラマが展開されていく。


 少しずつでいい。根気よく歩こう。健康への力がでてくるのは、それからである。その延長線上に、がんに対しては「早期発見」より「予防」を真剣に 考えるべきである、という心構えができてくる。


 健康志向の高まりの中で、ウオーキングを楽しむ女性が増えているという。結構なことだ。たとえば、ファッションに気を使う女性向けのウオーキングシューズ など、街で十分に履けるデザイン性の高いものが売れているそうだ。そう、ウオーキングはまず楽しむものである。

 さあ、きょうも「1日1万歩」目指して気楽にでかけてみよう。

 
 
今月のコラム【待合室】へ戻る

 



医療新報MENUへ戻る