2010年3月15日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★細さより曲線…やせ願望にもう一つの「待った!」
   
  前回は体を張って、やせ願望に「待った!」をかけた話を紹介したが、今回はそのいわば姉妹編。

 昨年春以来、女性誌に採り上げられるようになり、新聞も、たとえば、「女性美は細さより曲線に」(朝日新聞2月6日付)といった特集を 掲載しているのでご存知の方も多いと思う。その話題の主であるトレーナーはスーパースター・マドンナやハリウッド女優たちにエクササイ ズを指導するトレイシー・アンダーソンという美女で、“カリスマトレーナー”と呼ばれている。

 トレーシ―のDVDブックは昨年5月発売の第一弾が20万部、11月発売の第二弾も5万部が売れているという。エクササイズDVDといえば「ビリーズブートキャンプ」 が一時ブームになった。これはビリー隊長の号令にあわせたアップテンポのリズムによるエクササエズだが、こうした激しい動きで鍛えると、大きな筋肉がさらに 大きくなるだけであると、トレイシーはゆったりとした動作を繰り返えすことによって、普段は使わない体の中の「アクセサリー・マッスル」を刺激するという 方法をとるのである。

 こうしてトレイシー独自のメソッドが目指すのは、まるで“骨と皮ばかり”のスキニー(細さ)よりも、少しむっちりしているぐらいのカーヴィー(女性らしい 曲線美)であり、そうした体のラインを手に入れるにはトレイシーの方法なら間違いないとの評判を得ているようだ。トレイシーは言う。「私は体形の違う100人の 女性全員に柔らかな体のラインを生み出せます」。

 こうした自信満々のメソッドを全面に押し出されると、逆に、この方法にやみくもにはまってしまうといった危うさはないのか、と考えてしまう。そうした時、 唐突かもしれないが、郊外の住宅街路地の風景を思い浮かべてしまうのだが…。

 決まった時間になると、イヌを散歩させる人たちで溢れるのだ。イヌを介した近所の人たちとのお付き合いが広がるのは結構なことである。だが、寒い冬の間は どうしても運動量(散歩)が確実に減ってゆく時期だ。勢い、人は肥満体への危険にさらされ、一方イヌはぽっちゃりした姿が愛らしいからと、太りっぱなしに してしまう傾向はないだろうか。

 人もイヌも同じだが、肥満は糖尿病、呼吸器疾患などの内臓疾患や骨や関節の障害などを招きやすいものだ。何よりも体重に気を配りながらの食事管理が肝心で ある。

 栄養士を配した社員食堂の多くは、“野菜たっぷり、塩分控えめ”のメニューづくりに配慮する。ある社員食堂の栄養士さんは固めにゆでた根菜類は何度もかま ないと食べられないように工夫し「うちの定食は早食いできないんです」と“500キロカロリーで満腹感”への工夫を紹介してくれる。

 こうしたバランスのとれた食事管理と合理的メソッドによる運動管理が、同じ目的に向かって、いわば車の両輪となれば、それは女性の健康的な曲線美を創り 出す原動力となっていくのは明らかだ。

 その柔らかな体のラインとは、やみくもに「細さ」を追い求めるものではなく、カリスマトレーナーの指導で獲得できるであろう健康的な曲線美であるという わけである。

 この春には、その第三弾のDVDが発売されるというから「細さより曲線美」の価値観は定着していきそうな気配である。

 
 
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